30代後半から、明らかに抜け毛が増え、髪のボリュームが減ってきたことに、私は深刻な悩みを抱えていました。焦った私は、インターネットの口コミで評判の良かった、一本5000円以上もする、いわゆる「高級育毛シャンプー」に飛びつきました。有名な俳優が宣伝し、何種類もの希少な植物エキスが配合されているという、そのシャンプーを使えば、きっと私の悩みも解決するはずだ。そう信じていました。最初の数週間は、確かに、髪にハリやコシが出たような気がしました。高価なシャンプーを使っているという、プラセボ効果もあったのかもしれません。しかし、数ヶ月使い続けても、抜け毛の量が劇的に減ることはなく、むしろ、時々、頭皮にかゆみを感じるようにもなりました。そして、何よりも、毎月のシャンプー代が、私の家計に重くのしかかっていました。「こんなに高いお金を払っているのに、なぜ効果が出ないんだ」。私の心は、焦りと失望でいっぱいになりました。そんな時、ふと立ち寄ったドラッグストアで、皮膚科医が監修したという、ごくシンプルな「低刺激性のアミノ酸シャンプー」が、目にとまりました。価格は、1500円ほど。高級シャンプーに比べれば、はるかに安価です。私は、藁にもすがる思いで、そのシャンプーを試してみることにしました。そのシャンプーには、特別な育毛成分は、ほとんど入っていませんでした。ただ、洗浄成分が優しく、余計な添加物が入っていない、というだけです。しかし、使い始めて一ヶ月が経った頃、私は、明らかな変化に気づきました。あれほど悩まされていた、頭皮のかゆみが、すっかり治まっていたのです。そして、正しいシャンプー方法を意識するようになったこともあり、抜け毛の量も、心なしか、少し落ち着いてきたように感じられました。この経験から、私は学びました。薄毛対策とは、希少な成分を「足し算」していくことではなく、頭皮への不要な刺激や、間違ったヘアケアといった「引き算」から始めるべきなのだと。高価なシャンプーを追い求めるのをやめ、自分の頭皮に合った、シンプルなシャンプーで、優しく、丁寧に洗う。その基本に立ち返った時、私の髪と心は、ようやく、少しだけ軽くなったのです。
私が高級薄毛シャンプーをやめた理由