ある晴れた朝のことでしたが、いつものように洗面所で髪を整えようとした私は、不意に自分の生え際が以前よりも数ミリほど後ろに下がっていることに気づき、心臓が凍りつくような衝撃を受けました。おでこの形が以前とは明らかに異なり、前髪の隙間から見える面積が広がっている現実に直面し、そこから私の心は一気に不安と焦燥感に支配される日々が始まりました。一度気になり始めると、街を歩いていても他人の視線が自分の額に注がれているような被害妄想に陥り、強い風が吹けば髪が乱れて生え際が露出するのを恐れ、かつては楽しかった友人との交流も億劫になり、いつの間にか帽子を手放せない生活が日常になっていました。ネットで「生え際後退」と検索しては、自分よりも深刻な状態の人を見て一瞬だけ安心し、しかしすぐに自分の将来を悲観するという、終わりのない負のスパイラルの中にいた私は、ある日ついに自分の弱さを認めて専門のカウンセリングを受ける決断をしたのです。そこで自分の現状がAGAの初期段階であることを客観的なデータとして突きつけられたとき、ショックはありましたが、同時に「これから何をすべきか」という具体的な道筋が見えたことで、どこか救われたような気持ちになったのも事実です。それからの私は、医師の指導のもとで適切な治療を開始するとともに、それまでの乱れた生活を根本から見直し、髪の材料となるタンパク質を意識した食事や、深い眠りを得るための生活リズムを整えることに全力を注ぎました。変化はすぐには現れませんでしたが、数ヶ月が経った頃、鏡の中に映る自分の生え際に力強い産毛が芽吹いているのを見つけたときの喜びは、一生忘れることができないほど大きなものでした。生え際の後退という現実は確かに辛いものでしたが、それをきっかけに自分の身体を大切に扱うことや、外見だけでなく内面の自信をどう育むかを学べたことは、今の私にとってかけがえのない財産となっており、あの日鏡の前で立ち止まった自分を今は褒めてあげたいと思っています。
鏡の前で気づいた生え際後退と向き合う日々